人工股関節の術後脱臼

  1.  人工股関節置換術の合併症で最も患者様を心配させるのが術後脱臼です。 人工股関節の術後脱臼には、後方脱臼と前方脱臼があります。 後方切開(アプローチ)法では後方脱臼しやすく前方または側方切開(アプローチ)方では前方脱臼しやすくなります。
  2.  また、脱臼した場合は自分ですぐに救急車をよんで手術してもらった先生か最寄りの専門医のところにいってください。 無理に整復(脱臼した頭骨をもとに戻す)すると神経をまき込んだり骨折を起こすことがありますので 麻酔をかけてから整復せねばならないことが多いからです。

  3. アプローチ画像
  4. 後方アプローチ                側方アプローチ
  5. (殿部後方に皮切あり)        (切開は殿部後方に及ばない)
手術により脱臼しやすい姿勢が変わります!
  1.  日常生活では後方脱臼(正座・じゃがみこみ)の姿勢を取る機会の方が、 前方脱臼(腰を伸ばして股関節を反る)の姿勢を取る機会より圧倒的に多いのが現状です。

    • 人工股関節の後方脱臼
    • 後方切開での前方脱臼の可能性
    • 人工股関節の前方脱臼
    • 前方切開術での後方脱臼の可能性

  2.  後方切開法では、股関節後方の筋肉を切開するため後方脱臼しやすく、 前方または側方切開法では後方の筋肉は切開せずに前方の筋肉を切開するため前方脱臼しやすくなります。
  3. 後方切開法:後方脱臼(日常生活で起りやすい)を起こす。前方脱臼は起こしにくい。
    前方切開法:前方脱臼(日常生活で起りにくい)を起こす。後方脱臼は起りにくい。

  4. 論文報告:
       後方切開の脱臼率:3~6.5%
       前方切開の脱臼率:0.4%以下(側方展開)(Clin. Orthop. 393,168-180,2001)

  5.  従来の後方アプローチ(股関節の後方に切開を加えて後方の筋肉群を切開する方法)では 術後脱臼率が3~6.5%でしたが最近普及してきている側方アプローチ(股関節の側方に切開を加えて 関節前方を切開する方法:後方の筋肉を切開しません。)では0.4%以下の脱臼率となっています。 我々は、最近従来の後方アプローチから側方アプローチに変更しました。 側方アプローチが450例ほどになりましたがいまのところ日常生活動作による術後脱臼は経験していません (平成24年4月1日現在)。