治るようになった”リウマチ”治療について

(平成17年6月朝日新聞掲載)

◆最初の症状として関節のこわばり、痛みと腫れに注意

 リウマチは、女性に多い病気で発症年齢は、40~50歳台がピークで頻度は低いですが若い人や高齢者でも発症します。 日本では70万人の患者さんがおられます。最初の症状として一番多いのは、関節のこわばり・痛みと腫れです。 特に朝の起床時に感じる関節のこわばりはこの病気の初期から見られるリウマチ特有の症状です。 手指に起こることが最も多いのですが他の関節が初発のこともあります。

 多くの関節が同時・移動性・左右対称性に腫れてくる特徴があります。 この腫れが長期間続くと関節の破壊が起こり歩行困難などで体の自由がきかなくなることがあります。 よって、早期発見と早期治療がなによりも大切になってきます。 きわめて初期の頃で従来のリウマチ因子による検査が陰性の時は、診断が困難なことがありますが 最近開発された抗CCP抗体検査では疾患特異性が96%ときわめて高く早期診断の検査として期待されています (従来のリウマチ因子の疾患特異性は、70~80%といわれています)。

◆解明されてきたリウマチの原因について

 白血球は、本来は細菌・ウィルスなどの外敵から体を守る役割を担っています。 しかし、リウマチではなんらかの原因でこの免疫機能に狂いが生じて自分の関節を敵とみなして攻撃し破壊してしまいます (このため自己免疫疾患といわれています)。

最近の分子生物学・免疫学の研究によりリウマチの病態のメカニズムが解明されてきました。 白血球の中のTリンパ球になんらかの刺激が加わるとTNF-α・ IL-1・IL-6などの炎症性サイトカインといわれる 蛋白が産生されます。これが滑膜に作用し滑膜を増殖させ関節の骨・軟骨を破壊していくことがわかってきました。 この炎症性サイトカインの働きを抑えてしまう抗サイトカイン療法により関節破壊を防止することが可能になってきました。

◆様々な治療薬の登場:骨を侵す働きを防ぐ療法も

 薬物治療には、消炎鎮痛剤・ステロイド剤・抗リウマチ薬が使用されますが、免疫異常を抑制する抗リウマチ薬を 早期に使用し関節の破壊を抑制することが重要です。抗リウマチ薬の投与に関しては、骨のびらん(初期の破壊)が 出現する前・またリウマチの罹患期間が短いほど効果が高いといわれています。 現在もっとも効果が高い抗リウマチ薬は、メソトレキセートです。その他、期待される抗リウマチ薬には レフルノマイド・プログラフ(FK506)などがあります。これらの抗リウマチ薬は、関節の破壊進行を遅延させるといわれています。 これに対し関節破壊の進行を防止する効果が高いのが生物学的製剤を用いる抗サイトカイン療法です。 TNF-αを抑制するインフリキシマブは、点滴注射(維持療法は、1回/2ヵ月)ですがインフリキシマブの効果を長く持続させる 目的でメソトレキセートを併用することが必要です。同じTNF-α抑制剤のエターナセプトは、メソトレキセートの併用は 必要ありませんが2回/週の皮下注射になるため自宅での自己注射が検討されています。 現在、IL-6を抑制する薬剤が検討されています。これらの生物学的製剤は、高額になることが問題です。 最近、もう一つの方法として白血球除去療法が始められています。また、遺伝子解析技術の進歩により患者さんの 遺伝子情報をもとに一人一人に適した薬剤の選択を可能にするオーダーメイド医療の実現が期待されています。 私達は、現在新しい手法を用いて少し違う観点からリウマチ患者さんがより安心して治療を受けられる薬の開発に 取り組んでいます。

◆術後のQOL向上に大きく貢献:人工関節術手術の現状

 リウマチが進行して関節破壊により歩行困難になっても人工関節置換術により歩けるようになっただけでなく 旅行にもいけるようになられたリウマチ患者さんがたくさんおられます。 人工関節の耐久性(ゆるみ・磨耗)に関しては、デザイン(形状)・材質(金属・ポリエチレンの改良・セラミックの導入)の 進歩によりあまり心配しないでよいようになってきました。近年、高齢化社会を迎えたこともあり2003年に厚生労働省は 高齢者の人工股関節置換術に骨セメントを使用すると死亡事故が多く起こっていることを報告しました。 骨セメントを使用しない方が安全であることは従来から報告されていましたが、いままでのインプラントによる固定方法では 高度の骨粗鬆症の患者さんでは安定した固定が得られないという問題がありました。 私達の研究では、骨と結合するセラミックであるハイドロキシアパタイトをコーティングしたインプラントに 現在開発中の骨形成促進薬であるEP4受容体作動薬(プロスタグランディンE2の4つの受容体 EP1・EP2・EP3・EP4のうちの EP4受容体への選択的作動薬)の注射剤を併用した方法では高度の骨粗鬆症でも強固な骨との固定が得られることが 明らかになりました。従来の生体材料に現在開発中であるEP4受容体作動薬や副甲状腺ホルモンなどの骨形成促進薬を 併用させた新しい方法を骨粗鬆症の高度な高齢者やリウマチ患者さんに応用することにより術後のリハビリ・ 入院期間が短縮され早期のQOL(生活の質)向上が可能になると考えられます。 また、人工膝関節ではデザインの改良により正座に近いくらいに膝の可動域が得られる手術が行なわれています。

◆介護保険など公的支援を活用し早期診断で有効な治療で克服

 関節リウマチ患者さんは、40歳以上で介護保険の対象となりますのでケアが必要と思われる方は検討してみてください。 また、高額医療に対してはいろんな公的支援制度がありますので主治医の先生に相談してください。

 生物学的製剤が導入され薬剤の使用には従来以上に慎重な対応が必要です。 この上で、主治医との十分な話し合いを常に持ち一体となって治療にあたることが重要です。 そして、病気や薬を過度に恐れることなくご家族の方も一緒になって正確な知識を持ち病気を克服していくことが大切と思います。

 早期診断・早期治療により関節破壊が防止できるようになった現在においては、私達はリウマチ患者さんのさらなる QOL向上に関する新しい情報収集を常に行ない患者さんに適した治療を提供できるように努力していきたいと思っています。